院長の「当たり前」は、スタッフには伝わっていない|クリニックの価値観を共有する重要性

「どうして、こんなことも気づいてくれないんだろう?」
「普通に考えたら、こうすると思うんだけど……」
「患者様への対応は、これくらい当たり前にできてほしい」

美容クリニックの院長先生から、そんなお話を伺うことがあります。
院長先生の中には、長年の経験や患者様と向き合ってきた中で、「このクリニックでは、こうするのが当たり前」という価値観が自然とできています。

患者様への接し方。
スタッフ同士の声のかけ方。
忙しいときの動き方。
仕事に対する姿勢。
トラブルが起きたときの対応。

院長にとっては、わざわざ説明するまでもないことかもしれません。
しかし、スタッフからするとどうでしょうか。

「そのルール、聞いたことがありません」
「そこまで求められているとは知りませんでした」
「院長先生がそう考えているとは思いませんでした」

ということもあります。

これは、スタッフの能力や意識が低いからとは限りません。
単純に、院長の頭の中にある「当たり前」が、スタッフには共有されていないだけかもしれません。
組織が大きくなればなるほど、院長の感覚だけで全員が同じように動くことは難しくなります。

だからこそ、院長が無意識に大切にしている価値観を言葉にして、組織の共通認識にしていくことが重要です。

本記事では、美容クリニックにおける「院長の当たり前」を言語化する重要性と、スタッフと価値観を共有するための方法について解説します。

目次

1. 「普通はこうする」が、スタッフには伝わっていない理由
2. 院長の「当たり前」を言葉にしてみる
3. 価値観を組織の共通認識にするために必要なこと

「普通はこうする」が、スタッフには伝わっていない理由

院長先生がスタッフに対して、
「患者様が困っていたら、言われなくても声をかけてほしい」
「忙しいスタッフがいたら、自然に手伝ってほしい」
「患者様には、もう一歩踏み込んだ対応をしてほしい」
と思うことはないでしょうか。

こうした期待そのものが悪いわけではありません。
むしろ、患者様により良いサービスを提供したい、クリニックをより良くしたいという思いから生まれていることが多いでしょう。

問題は、その「こうしてほしい」がスタッフに具体的に伝わっているかどうかです。

例えば、院長が「患者様に寄り添った対応をしてほしい」と考えていたとします。
スタッフが笑顔で挨拶をし、丁寧に説明をしていれば、本人としては「十分に寄り添っている」と考えているかもしれません。

一方、院長が求めているのは、
「患者様が不安そうなら、こちらから声をかける」
「説明した内容を理解できているか、表情を見ながら確認する」
「帰宅後に困らないよう、最後にもう一度注意点を確認する」
といった、さらに一歩踏み込んだ対応かもしれません。

この差があると、院長は、「どうして言わなくてもわからないんだろう」と感じます。
しかし、スタッフからすれば、「言われたことはやっている」という状態です。

ここで起きているのは、能力の問題というより期待値のズレです。

院長が「当たり前」だと思っていることが、スタッフにとっても当たり前とは限りません。
これまで働いてきた環境も違えば、経験も違います。
前職では「患者様から質問されたら対応する」という考え方だった人が、新しいクリニックで「質問される前にこちらから気づいて声をかける」ことを求められても、最初から同じ感覚で動けるとは限りません。
また、院長自身にとっては長年の経験から身についた判断でも、スタッフにとっては初めて経験することかもしれません。

だからこそ、「普通はわかるでしょ」ではなく、「私たちはこう考えています」と伝えることが必要になります。

院長の「当たり前」を言葉にしてみる

では、院長の頭の中にある「当たり前」を、どのように言語化すればよいのでしょうか。
まずは、日々の診療やスタッフとのやり取りの中で、「なぜか気になること」を書き出してみることから始めてみましょう。

例えば、
・ 患者様への挨拶が小さいことが気になる
・ 患者様が待っているのに誰も声をかけないことが気になる
・ 忙しいときに自分の仕事だけをしているスタッフが気になる
・ ミスが起きたときに報告が遅いことが気になる
・ スタッフ同士の言葉遣いが気になる
・ 患者様への説明が必要最低限になっていることが気になる

こうした「気になること」の裏側には、院長が大切にしている価値観が隠れていることがあります。

例えば、「患者様が待っているのに誰も声をかけないのが気になる」のであれば、
「患者様を不安な状態で待たせたくない」
「患者様の立場になって考えてほしい」
という価値観があるのかもしれません。

「忙しいときに自分の仕事だけをしているスタッフが気になる」のであれば、
「チーム全体で患者様を支えることを大切にしたい」
という価値観があるのかもしれません。

「ミスが起きたときの報告が遅いことが気になる」のであれば、
「ミスそのものより、早く共有して問題を大きくしないことを重視している」のかもしれません。

このように、「何が気になるのか」から一歩掘り下げて、
「なぜ、それを大切だと思っているのか?」を考えてみます。

すると、単なる細かなルールではなく、クリニックとして大切にしたい価値観が見えてきます。

例えば、「患者様が困っていたら声をかける」という行動の背景に、
「患者様の不安をできるだけ減らしたい」
という価値観があるのであれば、その考え方をスタッフに伝えます。

そうすると、スタッフは「声をかける」という一つの行動だけを覚えるのではなく、その背景にある考え方も理解できます。
すると、別の場面で似たような状況が起きたときにも、自分で考えて行動しやすくなります。

大切なのは、「これをやってください」と行動だけを指示することではありません。
「なぜ私たちは、そうするのか」まで共有することです。

価値観を組織の共通認識にするために必要なこと

院長の価値観を言葉にしたら、それだけでスタッフに浸透するわけではありません。
大切なのは、日々の仕事の中で繰り返し共有していくことです。

そのためには、まず理念や行動指針など、クリニックとして大切にする考え方を言語化しておくことが有効です。

例えば、「患者様を待たせない」という考え方を大切にするのであれば、
「待ち時間が長くなりそうな場合は、事前に患者様へ声をかける」
「受付だけでなく、診療側も待ち時間を意識する」
など、具体的な行動まで落とし込んでいきます。

また、研修や朝礼、1on1などの機会を使って、
「このクリニックでは、なぜこういう対応を大切にしているのか」
を伝えていくことも重要です。

そして、実際にスタッフがその価値観に沿った行動をしたときには、きちんと言葉にして伝えます。

「今の患者様への声かけ、すごくよかったです」
だけではなく、
「患者様が不安そうなのに気づいて、こちらから声をかけてくれたよね。私たちが大切にしている『患者様の不安を減らす』という考え方が、まさに行動に表れていたと思います」
と伝える。

こうすることで、スタッフ自身も、
「これが、このクリニックで大切にされている行動なんだ」
と理解できます。

反対に、期待する行動ができていなかった場合も、単純に「もっと気をつけて」と注意するだけではなく、「なぜ、この対応を大切にしているのか」を改めて伝えることが大切です

また、価値観を共有することは、スタッフを院長の考え方に従わせることではありません。

院長の価値観を一方的に押し付けるのではなく、
「私たちのクリニックでは、患者様にどんな体験をしてほしいのか」
「スタッフ同士、どんな関係で働きたいのか」
「仕事をするうえで、何を大切にしたいのか」
を組織として考えていくことです。

スタッフが増えれば増えるほど、院長と全員が直接話す機会は少なくなります。
院長が一人ひとりに「こうしてほしい」と伝え続ける方法には限界があります。
だからこそ、院長の頭の中にある価値観を言語化し、理念や行動指針、研修、評価などの仕組みとつなげていくことが必要になります。

さらに、人事評価においても、
「売上を達成したか」
「業務をこなせたか」
だけではなく、
「クリニックが大切にしている価値観に沿った行動ができているか」
という視点を持つことができます。

例えば、「チームワークを大切にする」という価値観があるのであれば、
「自分の担当業務だけでなく、周囲の状況を見てサポートできている」
「必要な情報を周囲に共有できている」
といった行動を評価することもできます。

理念、日々の行動、評価。

これらがつながってくると、院長の「こうしてほしい」が、少しずつ組織全体の共通認識になっていきます。

そして、価値観が共有されている組織では、院長がすべてを細かく指示しなくても、スタッフ自身が「このクリニックならどうするか」を考えられるようになります。
これは、理念を現場の行動につなげることにもつながります。

まとめ|院長の「当たり前」を、組織の「共通認識」に変える

院長にとっての「当たり前」は、長年の経験や患者様との関わりの中で自然と身についたものかもしれません。
しかし、それをスタッフも同じように理解しているとは限りません。

「どうして気づいてくれないんだろう」
「普通はこうすると思うんだけど」
「これくらいはできてほしい」

そう感じたときこそ、一度立ち止まって、
「自分が当たり前だと思っていることを、スタッフにきちんと言葉で伝えているだろうか?」
と考えてみることが大切です。

院長が大切にしている価値観を言葉にする。
その価値観を具体的な行動に置き換える。
そして、理念や研修、日々のコミュニケーション、人事評価などを通じて繰り返し共有する。

そうすることで、院長の頭の中にあった「当たり前」が、少しずつ組織全体の「共通認識」になっていきます。
一人ひとりが同じ価値観を持って仕事をすることができれば、院長がすべての場面で指示を出さなくても、スタッフ自身が考えて行動できる場面も増えていきます。

「院長の考えをスタッフにわかってもらう」のではなく、
「クリニックとして大切にする価値観を、組織の共通言語にする」こと。

それが、理念や組織文化をつくっていく第一歩なのではないでしょうか。

Liberate Beautyでは、美容クリニックの現場経験をもとに、理念研修や人事評価制度、スタッフ育成、リーダー育成、組織づくりなど、クリニックの成長に合わせたマネジメント支援を行っています。

「院長の考えがスタッフにうまく伝わらない」
「スタッフによって患者様への対応にばらつきがある」
「院長が考えている『当たり前』を、どう言語化すればいいかわからない」
「理念をつくったものの、現場の行動につながっていない」

そんな課題を感じている場合は、まずは院長自身が大切にしている「当たり前」を一つひとつ言葉にしてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

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