「いい人を採用したい」が一番危ない?|美容クリニックの採用基準を言語化する方法

「いい人を採用したい」

美容クリニックの採用について相談を受けていると、院長からこのような言葉を聞くことがあります。
もちろん、「いい人に来てほしい」というのは、決して間違った考えではありません。
しかし、採用において問題になるのは、「いい人」とは、具体的にどんな人なのかが決まっていないことです。

「感じがいい」
「明るい」
「美容が好き」
「経験がある」
「コミュニケーション能力が高い

こうした条件は、応募者を見る上で参考にはなります。

一方で、それだけでは「このクリニックで活躍できる人なのか」を判断するには十分ではありません。
例えば、患者様への対応を丁寧にすることを重視するクリニックと、スピード感を持って効率的に業務を進めることを重視するクリニックでは、求める人材は同じでしょうか。

「自分から考えて動ける人」を求めているのに、入社後は何をするにも院長の確認が必要な環境だったらどうでしょうか。
「チームワークを大切にする人」を採用したのに、評価されるのが個人の売上だけだったらどうでしょうか。
採用時の基準と、入社後に求められることがズレていれば、採用ミスマッチにつながる可能性があります。

だからこそ、採用の前に考えたいのが、「私たちのクリニックでは、どんな人なら活躍できるのか?」という問いです。
そして、その答えを言葉にしておくことが、採用基準をつくる第一歩になります。

本記事では、美容クリニックにおける採用基準の考え方と、「いい人」という曖昧な基準を、実際の採用につなげるための言語化について解説します。

目次

1. 「いい人」だけでは、採用基準にならない
2. 「このクリニックで活躍できる人」を言語化する
3. 採用基準を「理念・評価」までつなげる

「いい人」だけでは、採用基準にならない

採用活動をしていると、
「この人、感じがいいな」
「受け答えもしっかりしている」
「人柄が良さそう」
といった、面接時の印象で採用を決めることがあります。

もちろん、第一印象や人柄は大切です。
しかし、採用を長期的な視点で考えると、それだけでは判断材料が足りません。

例えば、面接では非常に好印象だった人が、入社後、
「指示されたことはできるけれど、自分からは動かない」
「チームで協力するより、自分の仕事を優先する」
「患者様への対応より、効率を優先する」
「新しいことを覚えるのが苦手」
ということがわかるケースもあります。

逆に、面接では少し控えめだった人が、入社してみると、
「周囲をよく見てサポートしてくれる」
「患者様の変化によく気づく」
「業務改善について積極的に提案してくれる」
ということもあります。

つまり、面接時の「印象の良さ」と、入社後の「活躍」は、必ずしも同じではありません。
ここで重要になるのが、「どんな人がこのクリニックで活躍できるのか」という視点です。

例えば、
「明るい人」ではなく、「患者様やスタッフに対して、自分から気持ちよく声をかけられる人」
「主体性がある人」ではなく、「課題に気づいたとき、自分から相談や提案ができる人」
「協調性がある人」ではなく、「自分の業務だけでなく、チーム全体の状況を見て行動できる人」
というように、抽象的な言葉を具体的な行動に変えていきます。

この作業を行うことで、採用する側も、「この人は、求めている行動ができそうか?」という視点で応募者を見ることができるようになります。

採用基準とは、「いい人を選ぶための基準」ではありません。
「このクリニックで活躍できる人を選ぶための基準」です。

「このクリニックで活躍できる人」を言語化する

では、具体的にどのように採用基準をつくればいいのでしょうか。
まず考えたいのは、「このクリニックで長く活躍しているスタッフには、どんな共通点があるか」です。

例えば、
・患者様への対応が丁寧
・周囲を見て行動できる
・困ったときに相談できる
・新しいことを素直に学べる
・チームで協力できる
・自分から改善提案ができる
・クリニックの理念に共感している
などです。

ここで大切なのは、単に項目を並べるだけではありません。
「なぜ、それを求めるのか?」まで考えることです。

例えば、「主体性」を求めるのであれば、
「院長がすべての判断をするのではなく、現場のスタッフにも一定の判断を任せたいから」
という背景があるかもしれません。

「チームワーク」を重視するのであれば、
「患者様の対応を一人で完結するのではなく、受付・看護師・カウンセラーなどが連携する必要があるから」
という理由があるかもしれません。

このように考えていくと、採用基準は単なる「理想の人物像」ではなく、クリニックの経営方針や現場のあり方とつながった基準になります。
そして、ここでぜひ見直したいのが「理念」です。

クリニックの理念には、
「患者様にどんな価値を提供したいのか」
「どんなクリニックをつくりたいのか」
「スタッフにどんな働き方をしてほしいのか」
といった、院長の考えが込められています。

だからこそ、

理念 → 求める人物像 → 採用基準

という流れをつくることができます。

例えば、「患者様一人ひとりに寄り添う」という理念があるのであれば、
「患者様の話を最後まで聞ける」
「相手の状況に合わせて対応を考えられる」
といった行動に落とし込む。
そして面接では、その行動につながる経験を確認する。

このように、理念を採用基準まで落とし込むことで、「理念に共感してくれる人」という曖昧な採用から、より具体的な採用へと変えていくことができます。

採用基準を「理念・評価」までつなげる

採用基準をつくる上でもう一つ重要なのが、採用した後の評価まで考えることです。

採用時には、
「主体性のある人に来てほしい」
「チームワークを大切にする人を採用したい」
と考えていたのに、入社後の評価では、
「売上」
「業務量」
「勤務態度」
だけを見ていたらどうでしょうか。

スタッフからすると、
「結局、何を頑張れば評価されるの?」
という疑問が生まれてしまいます。

だからこそ、

理念 → 求める人物像 → 採用 → 育成 → 評価

までを一つの流れとして考えることが大切です。

例えば、採用時に「主体性」を重視したのであれば、入社後も、
「自分から課題を見つけて行動できたか」
「改善提案ができたか」
「周囲に働きかけることができたか」
といった行動を評価する。

「チームワーク」を重視したのであれば、
「周囲と連携できたか」
「後輩をサポートできたか」
「チーム全体を考えて行動できたか」
といった部分も評価する。

そうすることで、採用時に伝えたことと、入社後に求められることが一致します。

さらに、評価制度があることで、
「採用した人が、求めていた人物像に近づいているか」
を振り返ることもできます。

もし、
「主体性のある人を採用したはずなのに、みんな指示待ちになっている」
のであれば、採用だけの問題ではないかもしれません。
そもそも権限が与えられていないのかもしれません。
失敗できない環境になっているのかもしれません。
院長が何でも決めてしまっているのかもしれません。

つまり、採用基準をつくることは、「いい人を見つける」ためだけではありません。
自分たちのクリニックが、どんな組織をつくりたいのかを明確にすることでもあります。

まとめ|「いい人」ではなく「このクリニックで活躍できる人」を考える

「いい人を採用したい」

この言葉は、一見するととても自然な採用基準に聞こえます。
しかし、「いい人」の定義が人によって違えば、採用する人によって判断が変わってしまいます。

「感じがいい」
「明るい」
「美容が好き」
「経験がある」

こうした条件だけではなく、
「このクリニックでは、どんな人が活躍できるのか?」
を考えることが重要です。

そのためには、
・クリニックの理念を明確にする
・理念から求める人物像を考える
・求める人物像を具体的な行動に落とし込む
・その行動を面接で確認する
・入社後の育成や評価にもつなげる
という流れをつくります。

採用基準は、採用担当者だけが使うチェックリストではありません。
「私たちは、どんな組織をつくりたいのか」を表すものでもあります。

だからこそ、採用基準を考えることは、単に採用の精度を上げるだけではなく、組織づくりそのものにつながります。

「どんな人を採用したらいいかわからない」

そんなときは、求人票や面接質問を見直す前に、
「そもそも、私たちはどんなクリニックをつくりたいのか?」
から考えてみてはいかがでしょうか。
その答えの中に、自分たちが求める人材のヒントがあります。

Liberate Beautyでは、美容クリニックの現場経験をもとに、採用支援だけではなく、理念の言語化、求める人物像の整理、採用基準の設計、オンボーディング、人事評価など、採用から定着・育成までを一つの流れとして考えた組織づくりを支援しています。

「採用しても、思っていた人と違うことが多い」
「面接で何を見ればいいのかわからない」
「採用基準が院長の感覚に頼っている」
「採用と評価がつながっていない」

そんな場合は、一度「いい人を採用する」という考え方から、「自分たちのクリニックに合う人を採用する」ための基準づくりに目を向けてみてはいかがでしょうか。

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