なぜスタッフは「指示がないと動けない」のか?|自律して働ける美容クリニックのつくり方

「最近のスタッフは、指示を出さないと動いてくれない」
「何か気づいても、自分から動こうとしない」
「いちいち確認してくるので、結局こちらの仕事が増えてしまう」

美容クリニックの院長や管理職から、このような相談を受けることがあります。

本来であれば、スタッフ一人ひとりが状況を見て、自分で考え、必要な行動を取ってくれるのが理想です。
しかし、スタッフが「指示がないと動けない」状態になっているとき、単純に「主体性がない」「最近の若いスタッフは……」と片付けてしまうのは少し危険です。

なぜなら、その背景には、
「自分で判断していい範囲がわからない」
「失敗したら怒られるかもしれない」
「何をしたら評価されるのかわからない」
「院長が結局すべて決めてしまう」
といった、組織側の要因が隠れていることがあるからです。

スタッフの主体性を高めたいのであれば、まず考えたいのは「どうすればスタッフが自発的に動くのか」ではなく、「スタッフが自分で判断して動ける環境になっているか」ということです。

本記事では、スタッフが「指示待ち」になってしまう背景と、自律して働ける組織をつくるために見直したいポイントについて解説します。

目次

1. 「指示待ちスタッフ」は、本当に主体性がないのか?
2. スタッフが自分で判断できない組織には、理由がある
3. 「任せる」ために必要なのは、権限と判断基準

「指示待ちスタッフ」は、本当に主体性がないのか?

「もっと自分から動いてほしい」

これは、多くの院長や管理職がスタッフに対して感じることの一つです。

例えば、
「次に何をすればいいですか?」
「これって私がやっていいですか?」
「○○さんに確認したほうがいいですか?」
と、何かあるたびに確認される。

「そこは自分で考えて動いてほしい」と思ってしまうのも無理はありません。

しかし、ここで一度立ち止まって考えてみる必要があります。
そのスタッフは、本当に「考える気がない」のでしょうか?
もしかすると、
「自分で判断して、間違っていたらどうしよう」
「勝手にやったと思われたくない」
「どこまで自分で決めていいのかわからない」
と感じているのかもしれません。

例えば、以前スタッフが自分で判断して対応したところ、「なぜ勝手に判断したの?」と注意された経験があれば、次からは当然「確認してから動こう」と考えるようになります。
また、何か提案しても毎回、
「それは院長に確認して」
「前からこのやり方だから」
「私が決めるから大丈夫」
となれば、スタッフは次第に「自分で考える必要はない」と学習してしまいます。

つまり、「指示待ち」という行動は、スタッフの性格だけで生まれるものではありません。
組織の中で、「自分で考えて動くこと」が歓迎されているのか。
ここを見ることが重要です。

スタッフが自分で判断できない組織には、理由がある

スタッフが主体的に動けない背景には、いくつかの共通した要因があります。

理念が「行動」まで落とし込まれていない
「患者様第一」
「美容医療を通じて幸せを提供する」
クリニックの理念として、このような言葉を掲げているところは少なくありません。
しかし、実際の現場で、
「患者様第一とは、受付ではどんな行動をすることなのか」
「このケースでは、理念に沿ってどう判断するのか」
まで共有されていなければ、理念は判断基準になりません。

「院長ならどうするか」を毎回確認するのではなく、「このクリニックでは何を大切にして判断するのか」がスタッフ自身にもわかる状態をつくることが大切です。

権限が与えられていない
「もっと自分で考えて動いてほしい」と言いながら、実際には何を決めるにも上司の承認が必要。
これでは、自律的に動くことは難しくなります。
もちろん、医療安全や経営判断など、スタッフだけで決めてはいけないこともあります。
重要なのは、
「スタッフが判断していいこと」
「リーダーが判断すること」
「院長が判断すること」
の境界を明確にすることです。

失敗できない
「自分で考えて」と言われても、失敗したときに強く責められる環境では、人は積極的に判断しなくなります。
「怒られないために、確認してから動こう」という行動が増えていくからです。
もちろん、何でも失敗を許容すればいいわけではありません。
大切なのは、失敗したときに「なぜそう判断したのか」を振り返り、次の判断につなげられる環境です。

評価基準がわからない
「主体的に動いてほしい」と言われても、何をすれば「主体的」と評価されるのかがわからなければ、スタッフは動きにくくなります。
例えば、
・課題を見つけて改善案を出した
・後輩のフォローをした
・業務効率化の提案をした
・患者様への対応を工夫した
こうした行動を評価するのかどうか。
「頑張っている人を評価する」と言うだけではなく、どんな行動を評価するのかを明確にすることも、スタッフの主体性を引き出すポイントです。

「任せる」ために必要なのは、権限と判断基準

スタッフに自律して働いてもらうために、「もっと任せてみよう」と考える院長や管理職もいるでしょう。
しかし、単純に仕事を丸投げするだけでは、任せることにはなりません。
任せるためには、「権限」と「判断基準」の両方が必要です。

例えば、
「この範囲は自分で判断していい」
「この金額まではリーダー判断で対応できる」
「このケースは院長に相談する」
「患者様対応で迷った場合は、この基準を優先する」
といったルールを決めておく。
そうすれば、スタッフは「どこまで自分で判断していいのか」がわかります。

さらに、最初からすべてを任せる必要もありません。

まずは小さな業務から任せてみる。

自分で判断する。

結果を振り返る。

できる範囲を少しずつ広げる。

このように段階的に権限を広げていくことで、スタッフ自身にも「自分で判断しても大丈夫」という感覚が身についていきます。

そして、もう一つ重要なのが、上司側が「任せた仕事を奪わない」ことです。
スタッフに任せたにもかかわらず、
「やっぱり私がやる」
「それは違うから、こうして」
「念のため私が確認する」
と毎回介入してしまえば、スタッフは「どうせ最後は上司が決める」と感じるようになります。

もちろん、必要な場面での確認やサポートは必要です。
しかし、任せると決めたのであれば、ある程度見守ることも必要です。

スタッフが自分で考えて動けるようになるには、「考えていい」「判断していい」「任せてもらえる」という経験の積み重ねが欠かせません。
これは、院長だけではなく、主任やリーダーなど、現場の管理職にも同じことが言えます。

まとめ|スタッフの「主体性」を求める前に、主体的に動ける環境をつくる

「スタッフが指示待ちで困っている」

そう感じたとき、まずスタッフ自身の問題として考えてしまうかもしれません。

しかし、指示待ちになっている背景には、
・理念が具体的な判断基準になっていない
・自分で判断できる権限がない
・失敗することが許されない
・何をすれば評価されるのかわからない
・院長や上司が何でも決めてしまう
といった、組織側の問題が隠れていることがあります。

スタッフに「もっと主体的に動いてほしい」と求めるのであれば、その前に、
「このクリニックでは、スタッフが自分で考えて動ける環境になっているか?」
を見直してみることが大切です。

主体性は、「持ってください」と言って生まれるものではありません。

自分で考えていい。
自分で判断していい。
失敗しても、そこから学べる。
頑張ったことを見てもらえる。
そして、自分の判断がクリニックの役に立っている。

そうした経験を積み重ねることで、スタッフは少しずつ「指示を待つ人」から「自分で考えて動く人」へと変わっていきます。
そして、そのために必要なのが、理念・権限・評価・マネジメントを一つの仕組みとしてつなげることです。

「最近、スタッフが指示を待つようになった」
「何をするにも確認されてしまう」
「もっと現場に判断を任せたい」

そんな場合は、スタッフの主体性だけを見るのではなく、まず現在の組織の仕組みを見直してみてはいかがでしょうか。

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